「駐妻 ノイローゼ」「駐妻 メンタル」などとキーワード検索すれば、本当に多くの記事が出てきます。そのほとんどは、海外という居住生活からのストレス、コミュニティが小さいから起こるストレス、日々の生活にやりがいを持てないストレス、自分の存在価値を見出せないストレスなど様々なものがあげられます。
そして、駐妻・駐夫のキャリアがハイレベル化している現状を踏まえ、キャリアブランクへの心配や帰国後の再就職への不安など、悩みは、高度化・複雑化しているようです。
一方、駐妻・駐夫としての期間を存分に楽しみ、イキイキと生活しながら、次のキャリアにつなげていらっしゃる人もおり、そのような方は、「マインドの持ち方」と「行動に移すやり方」が上手いように感じています。
今日はどうしたらメンタルに不調をもたらすリスクを減らしながら、意義ある帯同期間にするかについてのヒントについてお話したいと思います。
イキイキと過ごしている駐妻・駐夫の多くは、帯同期間にやりたいことがはっきりしている⁉
イキイキと帯同生活をしている方というのは、資格取得、学位取得、現地就労と方向性は何でもよいのですが、今この帯同期間中に、やるべきことに没頭できている印象があります。
つまり、この帯同期間中に何をするか、何を手に入れるかというゴールセッティングできている人が多いということでしょうか。
そういう方は、「帰国後の就職先があるか心配だ・・・」という不安は一度横に置いておいて、ぼんやりとではあるものの、帰国後の働き方や自身のキャリアイメージがあり、そのゴールから3年前、2年前、1年前と今ある自分の立ち位置を振り返り、ゴールと現状の立ち位置のギャップを埋めるべく、目の前の努力に邁進できているという感じです。
このような帯同ライフスタイルを送る方は、自身のやるべきことが明確であり精神的に良い状態にあるためか、所謂、日本人コミュニティの狭さからくるようなストレスや、海外居住に伴うストレスなど、そういった別次元のストレスも「相対的に」小さく映っているような印象すらあります。
つまり、自身の取り組むべく道が明確であるが故、そのほかストレスも含め、小さなことが気にならないというような状況でしょうか。
しかし、帯同期間の方向性を決める事こそが難しい
しかし、ぼんやりとでもゴールセッティングし、やるべきことを決めるということは、非常に難しく、だからこそ悩んでしまうということも事実です。
数年後の姿を確定することはできないことが、駐妻・駐夫の不安の根源?
そもそも「数年後の自分は、よくわからない」という不確定な状況に対しての耐性が、日本人は低いのではないかと思います。起こり得る困難も含めてその過程を楽しもうというよりも、とにかく数年後の自分のイメージをはっきりさせておきたいと思う傾向が強いように思います。
日本人の特性として、日々の暮らしの「変化を楽しむ」というより、ある一定の枠組みの想定内の中で、安定した生活を楽しみたいという傾向が比較的強いように思います。
しかし、結局この「数年後の想定イメージをはっきりさせる」ということこそが、パートナーの転勤に伴う帯同において、もっとも困難なことであることから、必要以上に悩みすぎてしまうと思うのです。
日本人はキャリアを考えなくてもキャリアアップできてしまう
振り返ってみると、日本人である私たちは自身でゴールをセッティングする必要がない人生を歩んでいるとも思います。学生のころも、どの大学にしようか?学部をどうしようか?どの会社にしようか?といった小さな悩みはありながらも、みな一斉に進学をし、新卒一括採用という世界的に見ればかなり特殊なフレームの中で、みな一斉に就職をしていきます。
そして、日系企業の多くは、一度入社してしまえば、キャリアパスを従業員に考えさせるということはあまりなく、会社側に人事異動の裁量があり、いくつかのルートはあるものの、その規定路線の上ですごろくのように社内でキャリアアップしていくことが一般的かと思います。
駐妻・駐夫となり始めてキャリアデザインを考える
その様な中、ある意味、自身のキャリアや人生のプランを「自分ごと」ととらえずに過ごしていても、人生が送れてしまうのが日本のシステムなのだと思います。つまり、転職という選択肢を積極的に取っていなければ、キャリアデザイン、もっと言えば人生デザインを他者(会社)に委ねることができてしまうのが、日本だということかもしれません。
だからこそ、配偶者の転勤に伴いはじめてそのシステムの外となり、自分自身で自由に人生プランを描いてくださいとなった時、「さて、この先どのような人生デザインをしようか?」と、戸惑いを覚えてしまうように感じます。
日本人は、キャリアデザインのトレーニングをしてきていない
自身でオーナーシップをもち職場やポジションを変えていく文化背景のある環境であれば、「1年後はどのように過ごしたいか?」「3年後はこんな感じのライフスタイルにしたい」こういったテーマの問題に、自発的に本人が考える機会を持つであろうと感じるのです。
別にデスクに向かってわざわざ考えるということでなくも、自然と「もっと他の選択肢はないか?」など、そういう思考が自然と身についているように感じます。ある意味、日本人はこのトレーニング機会を与えられていないわけです。 ですから、帯同に伴っていきなり悩んでしまうということは、ある意味自然なことかもしれません。
駐妻・駐夫メンタル不調にならない為のヒント① 不安と思う気持ちを自分でコントロールする
極論、将来のことを不安に思ってもしょうがない
帰国して仕事があるか不安だ、キャリアブランクが心配、などの声は本当に多く聞こえるわけですが、「帯同している現時点」においてそれらをどれだけ心配し、不安に思ったとしても仕方がないわけです。望むような仕事があるかどうかは極論マーケットニーズによりますし、帰国する数年後の世界経済の先行きもわからなければ、日本のマーケット状況も読めません。
そういった不確定な要素について思いをはせて悩んでいても仕方ないわけです。だからこそ、「帯同という期間を有意義なものにできるか?」ということは、自身のマインドのコントロールにかかっています。
不安はコントロールできる
実は、不安はコントロールできます。例えば、今ある状況を不安と思うのか?というのは本当に人それぞれです。貯金が1億円あっても不安に感じる人は感じますし、逆に貯金が1百万円でも平気な人もいます。
自分の先行きが見通せなくて不安というレベル感が、本当に今感じるほどに高いレベルの不安なのか?ということを、考えてみるということでしょうか。
考えようによっては、先行きが見えないことは、これまでと違う新しいことにチャレンジできる環境であるということかもしれませんし、とことん自分に向き合ってみる時間を手にしているのかもしれません。
駐妻・駐夫メンタル不調にならない為のヒント② 方向性を強引に確定してしまう
アクションに移してしまい、不安を感じる思考スペースを与えない
もしくは、色々と不安にならないようなマインドセットの努力をしたけれども、それでも不安に思ってしまうということであれば、仮にでもゴールをセッティングしてしまい、それに向かって邁進することがいいかもしれません。
これで、不安は解消されます。本質的には解消されているわけではありませんが、自身が不安に感じる思考スペースが極端に小さくなるという感じでしょうか。
例えば、「帰国までにTOEIC900点をとる!」ということでもよいのですが、ある意味どの業界でも汎用性があり転職等にも優位になりそうな資格やスキルにターゲットを置き、後は、何も考えず目の前の点数を上げることに集中するという戦略です。
ゴールが決まらないことが不安なのですから、TOEIC900点というゴールさえ確定してしまえば、不安からは解放されることでしょう。そして、不安があろうがなかろうが、そういった資格の実績は、帰国後のキャリアにとってマイナスにはならないわけです。
できれば、帯同中の過ごし方をパートナーと事前に握っておく
これから帯同するかどうかを悩んでいるという方へのアドバイスとしては、できれば、帯同中の過ごし方の方向性と予算感だけでも、パートナーと事前に話し合いができているとよいかと思います。
何か新しいことをするにはお金がかかる事ですし、場合によっては時間的な融通や調整をパートナーにサポートしてもらう必要があるかもしれません。
詳細には決められないまでも、駐妻・駐夫として、どういった帯同生活を送りたいか、自身のキャリアにプラスになるような方向性についても時間を割くことを、理解してもらう素地を作っておくことはとても大事かと思います。つまり、「この帯同期間は、家事育児だけをするためだけでなく、自分の将来のキャリアにとっても意義のある時間である」というコンセンサスが、実は、非常に大事というわけです。
- イキイキと過ごしている駐妻・駐夫の多くは、既に帯同期間にやりたいことがはっきりしている⁉
- しかし、帯同期間の方向性を決める事こそが難しい
- 数年後の姿を確定することはできないことが、駐妻・駐夫の不安の根源?
- 日本人はキャリアを考えなくてもキャリアアップできてしまう
- 駐妻・駐夫となり始めてキャリアデザインを考える
- 日本人は、キャリアデザインのトレーニングをしてきていない
- 駐妻・駐夫メンタル不調にならない為のヒント① 不安と思う気持ちを自分でコントロールする
- 極論、将来のことを不安に思ってもしょうがない
- 不安はコントロールできる
- 駐妻・駐夫メンタル不調にならない為のヒント② 方向性を強引に確定してしまう(アクションに移してしまう)
- できれば、帯同中の過ごし方をパートナーと事前に握っておく
- できれば、帯同中の過ごし方をパートナーと事前に握っておく