配偶者(駐妻・駐夫)の就労に関する「パートナーの会社ブロック」について考えてみた

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共働きが当たり前になった現在、駐在員の配偶者(駐妻・駐夫)は、帯同前当たり前のように日本でキャリアを積んでおり、帯同中もキャリアを継続したいと考える人も非常に多くなっています。


しかし、配偶者が現地で働こうとした際、「駐在員本人の会社から反対」により就労を断念するケースも多いのが実態です。残念ながら、多くの事例において、「前例がないからNG」、「RISKが想定できないからNG」などの理由ですまされ、反対とする明確な理由が説明される事は多くなく、様々な観点から、本課題について考えてみました。

パートナーの会社が、配偶者の就労をNGとする理由 ベスト3


それでは、そもそもなぜパートナーの会社は
配偶者の就労をNGというのか?を整理してみました。


理由① そもそも前例がないし、調べるのメンドウだからNG

残念ながら知能指数ゼロノ回答ですが、そもそも会社側に十分な人的・質的リソースがないような場合、塩対応されるというのがこのケースです。


理由② よくわからないけど、色々とRISKありそうだからNG

例えば、仮に配偶者が何か現地で問題を起こしたら、会社側もトラブルに巻き込まれるのでは?、将来的に、次の駐在員のビザの取得が難しくなってしまうのでは?etc.。こういった妄想が膨らむと、配偶者の就労という、「そもそも会社にとってはメリットが何もない」と思われることに対して、わざわざRISKを取って、認めるわけにはいけないという結論になるものです。日系企業にありがちな感じですよね・・・。


理由③ 会社の名前に傷がつくからNG

現地企業などでバリバリ働きたい人はいいけれど、例えば、日系レストランなどの飲食業でのアルバイト、趣味の延長のお稽古レッスンなどをされたら困ると考えるケース。会社が職業のレベル感?をランク付けし、万が一水商売などされたら会社のレピュテーションに傷がつくということを心配するがあまり、とりあえず、全ての就労は不可と判断するような状況です。 


例えば、宗教上の理由などで、現地人ですら女性が働けない環境にあるなど、就労を絶対的に認められないなどの理由が背景にあれば別ですが、御覧いただいてわかる通り、結局どれもロジカルできちんと説明責任を果たしているものは少ないといえるのではないでしょうか?


もう少し個別の観点から、考えていきたいと思います。

「働いてもいいけれど手当なくなります、それでもいいですか?」海外勤務諸手当に関する考え方


日系企業において、海外赴任者に対する賃金には
「No Loss, No Gain(ノーロス・ノーゲイン)の原則」という考え方を取り入れる企業が多くみられます。これは、海外赴任したことでも日本で勤務していたときと「損も得もしない」という考え方です。つまり、日本国内で勤務していたら発生しなかったコストが、海外に転勤することでかかった場合、それをカバーしてあげましょうというのが駐在諸手当であります。

購買力補償方式
「購買力補償方式」は、3年から5年というある一定期間を海外で勤務し、本国へ帰ることを前提とし、海外派遣によって経済的な損失や利益が発生することのないよう('No Loss,No Gain')、本国と同等の購買力を補償するという考え方です。



この考え方に基づき、
その国では、日本よりも高い所得税がかかる
→日本と同じ手取りになるように計算しましょう


その国では、日本よりも高い物価がかかる
→物価調整をして給与を支給しましょう


もともと税率や物価に関して用いていた考え方ですが、昨今ではこの考え方を、より広範囲で解釈することも多くなっており、住宅、教育、海外勤務手当の考え方にも当てはめている企業は多いかと思います。


「配偶者が就労した場合は、手当がなくなります。それでも良いですか?」というような、半ば脅しのような回答をされるケースがあると聞いたことがありますが、このNo loss, No gainの考え方に立ち返った時、本当にそれらの手当の必要性がなくなるかは、おおいに疑問が残るわけです。


つまり、配偶者が就労したところで、例えば、子供が日本人学校に通う必要は変わらず、予防接種の必要性は依然残ります。なぜ、No loss, No gain の観点に立ち返った時、配偶者の就労により、それら手当がなくなるのか?ロジックだった説明ができないのではないかということです。


この観点から、私自身は、手当の減少分を稼げるような人「だけ」が働けばいいんでしょという考え方に疑問を抱いています。海外勤務手当のそもそもの背景を考えると、妻の所得とは何ら関係のない手当が大部分だということです。従い、一度パートナーの海外勤務手当制度がどういう建付けで策定されているのか、よく読んでみることを強くおススメします(この点、駐在員本人もよく理解していないことが多いです)。


加えて、駐在をする前、これらの諸手当を含んだ賃金について、会社から説明(オファー)を受け、それを受諾する形で赴任すると思いますが、配偶者の就労の一点のみにフォーカスをあて、これら諸手当を大幅に下げることが許されるのか?という点も議論の余地がありそうです。


本件に関して懸念があるとすれば、残念ながらこの駐在諸手当を幾らとするか?については、例えロジックがなくとも、また、説明責任が果たせないとしても、No loss, No gain なんて関係ない、と開き直ってしまえば、結局は会社との交渉事にすぎないことです。特に中小企業などでは「こう決めました」と言われてしまえば、その金額の多寡について、その是非を交渉するしかないということでもあります。


一部会社では、海外勤務手当の取り決めが、労使合意マターであるケースもありますので、その観点から、個人で直接交渉するのではなく、社内労働組合の協力を仰ぐのも手かと思います。

会社の税負担が増えるからNG & 納税手続きが煩雑になるからNG


海外給与の手取り額は、国内勤務者との公平性を担保するため、日本で納税した場合の想定税額や社会保障費を差し引いた分をネットとして計算しますが、仮に配偶者が就労すると、その計算方法が変わるため、会社の税負担が重くなることから就労を認めないと説明されたケースがあると聞きました。


しかし、これは差額で発生した税額をキチンと算出した上で、その分だけ配偶者が負担すれば終わる話であり、就労NGとする明確な理由とは言えないように思います。


また、国によっては夫婦合算で納税する国もありますが、合算時の計算が煩雑でコンサルを起用する必要があり、その費用を会社が負担できないため、就労をあきらめてくれと説明されたというケースもあると聞きましたが、こちらも、仮にコンサルフィーがネックということであれば、この費用を個人で負担するべきかの判断ということが論点であり、就労NGとする理由には不十分です。


これはあくまでも感覚ですが、従業員一人の給与計算を毎月するあたっての手数料が多額に至るとは考えにくく、多くとも数万円ほど負担する覚悟があればクリアできるような問題に思います。

日本国憲法「職業選択の自由」に照らし合わせてみる


上記、手当の考え方や納税に関してはテクニカルな観点となりますが、次に「職業選択の自由」という、もう少し概念的なお話をさせていただきます。


中学校の教科書みたいですが、日本国憲法でも定める通り我々には「自己の従事する職業を決定する自由」を持ち合わせています。この観点から考えた場合、「駐在に帯同している」という状況だけをもって、一個人の就労を認めないということが、本当に許されることなのか?という点は、様々な観点から議論されるべきであると思います。


会社と労働契約を結んでいるのはパートナーであり、その配偶者の人生について、会社側が物を申すことは難しいと考えるのが普通ではないでしょうか。


例えば、宗教上の理由などで、現地人ですら女性が働けない環境にあるなど、就労を絶対的に認められない理由が背景にあれば別ですが、少なくともビザ等の問題がクリアにできる状況において、それでもなお配偶者の就労を認めないとするのであれば、納得できる説明を果たす責任が会社にはあるのではないかと思っております。

最後に・・・根強い固定観念を打破するには


こういった人事制度に関する最終判断は、多くの場合会社の人事関係の役職者の判断となるケースが多いですが、日系大手企業の場合、多くの役職者世代は専業主婦を配偶者に持つケースが殆どであり、彼らが若い頃駐在した際も、「専業主婦としての配偶者」を帯同させていました。


そういった環境において、駐在員の配偶者が「働く」という選択肢がRealityをもって想像できないという事が背景にあると考えております。


彼らの思考は
「なぜ、十分な海外諸手当を払っているのに働く必要があるのか?」
「配偶者の役割は、駐在員の心身の健康を支えることだ」
「わが社の配偶者が働いていると知られたら、恥ずかしいじゃないか」といったことであり


「帰国後のキャリアを継続させたい、少しでも帯同期間中を有意義なものにしたい」
「家政婦をするために、はるばる海外にきたわけではない」
「そもそも日本でダブルインカムだったから、手当入れても世帯収入大幅ダウンだ」


という「共働き世代の感覚」が想像をはるかに超える世界であるということかと思います(そして、本当に悪気がないということです)。これら共働き世代の肌感覚は、言語化されなければ理解されることはなく、あきらめずにコミュニケーションをとっていくしかありません。

重要な役割を担うのは、駐在員本人!


そして、この交渉において非常に重要となる人物は、「海外駐在員本人」です。


本件の非常に「厄介なこと」は、配偶者が自分の就労について自ら交渉するのではなく、パートナーが会社と交渉をするという構図です


何としても配偶者の就労を認めてもらいたいという「配偶者のキャリアへの尊重と理解」
そして「行動力と交渉力」がなければ、「会社から就労ダメって言われた―、残念だね」という会話で終わってしまいます。


駐在中、新しい業務になり多忙なのはわかります、めんどくさいヤツだと会社に思われたくないのもわかります、しかし、どうか就労NGとするきちんとした理由を会社に説明させて下さい、会社がわからないというのであれば、弁護士なりコンサルを起用させるなど働きかけて下さい。また、社内労働組合に相談するのもよいでしょう。


その行動一つが、配偶者のキャリアを大きく変える一歩になるだけでなく、全世界で働く駐妻・駐夫を支援する第一歩になると思うのです。


「徹底的に調べ、弁護士やコンサルにも確認したけど、やはりこういった理由があるから、就労は難しいと判断」した場合と、「とりあえずダメー」とした場合、配偶者が受ける、パートナーの会社ヘの印象は大幅に違います。


そして、この交渉の難易度が低くないことを知っている配偶者からすれば、例え、結果は就労NGとなったとしても、一緒に交渉をしてくれたというパートナーへの感謝の気持ちは言うまでもありません。


配偶者の気持ちを大事にし、一歩踏み出してくれる駐在員が増えることを願っています。


※本件に関しては、あくまでも個人の見解です。今後、順次update致します。

この記事を書いた人
155naicai

▶︎ 女性のキャリア・生き方を考えるマガジン Wherever we are の管理人 ▶︎ 中国留学→総合商社→東南アジア20代駐在→月イチ海外出張・海外旅行→ワーママ→アメリカ帯同&起業&海外onlineMBA ▶︎ 自身の海外経験から学んだ価値観も踏まえながら、キャリア・生き方・働き方など情報を発信中

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