これまでの海外駐在に帯同する多くは専業主婦が主体の時代でした、しかし、昨今、多くの海外駐在に帯同する配偶者の多くは、日本でキャリアを築いています。
仮に、パートナーが海外駐在することになり、自身も海外駐在へ帯同するとなっても、何らかの形でキャリアを継続したいと考える人が多くなっていることことは頷けます。
海外駐在員・配偶者の就労には3つのブロックがある
海外帯同中だとしても働きたい。そんな時に壁に当たるのが、3つのブロック。
「1:VISAブロック」
「2:パートナーの会社ブロック」
「3:夫ブロック」です。
多くの駐在・配偶者のケースを見てきて、皆さんこの3つのうちのどれかのブロックに遭遇して、現地での就労が叶わず・・・というケースが多いように思います。
海外駐在、配偶者就労のブロックその①VISAブロック
当たり前ですが、日本国外で外国人として就労することになると、就労VISAの問題が出てきます。このVISA取得の難易度がどの程度かということは、本当に国によってさまざまですが、一筋縄ではいかないケースもよく聞きます。
駐在員の配偶者という、数年間の期限付き条件である日本人に、現地採用として就労VISAを会社に用意してもらうこと自体にそもそも難易度が高いケース。
もしくは、アメリカのように、海外駐在員の配偶者という立場でも、一定のプロセス(EAD取得)を踏めば就労が可能となるにも関わらず、受け入れ企業側として、グリーンカード・ホルダーでないと実質NGなどというようなローカルの慣習があるような国もあります。
行政上、オフィシャルに働く権利を得る、ここをクリアすることがはじめの一歩になります。
海外駐在、配偶者就労のブロックその②パートナーの会社ブロック
「働く権利」はどこへやら??という感じですが、この令和の時代になっても海外駐在委の配偶者が現地で就労することを良く思わない企業はまだまだ多い様です。
過去からの、専業主婦モデルを引きずって、そもそも配偶者が現地就労することをイメージできない、もしくは何かトラブルにあったら大変では?などリスクを定量化できない状況にも関わらず、前例がないからNGなど・・・。
この点については、下記の記事で詳しく書いていますので、ご参照下さい。
海外駐在、配偶者就労のブロックその③パートナーのブロック
日本で共働きをしていたのに、海外駐在中は自宅にいてほしいと要望されたりという方もいらっしゃるかと聞きます。
海外駐在という枠組みの中で、パートナーシップの関係性が変わってしまうということでしょうか。
より厄介なのは、②会社ブロック と③パートナーのブロック のコンビネーション
しかし、それ以上に、このパートナーのブロックは 「2:パートナーのブロック」と絡み合うと非常に厄介です。
上述の通り、就労を実現するには、「1:VISA」と「2:パートナーの会社ブロックがない」をクリアする必要がありますが、夫婦間で意見が違うと、そもそもパートナーの会社との調整に進めなかったりするわけです。
仮に、会社との調整がスタートしたとしても、会社という対外的な交渉をするにおいて夫婦間で歩調を合わせるのは難しくなります。
会社が就労に関して難色を少しでも示した場合、駐在員本人(多くは夫)は、配偶者(多くは妻)と会社との間の板挟みにあうため、よりお願いしやすい妻側に「働かなくてもいいんじゃない?あきらめよう」と譲歩を求めるということでしょうか。
よって、会社ブロックでありながら、実は夫ブロックという構図は結構あります。
駐在員本人にとってはメンドウな会社との交渉
夫の会社が「NO」といった場合、それを交渉するのは駐在員(となる)本人です。その会社に所属する社員、従業員として、会社のルールに対して意を唱えるわけですからなかなかエネルギーを要します。
社内での人間関係もあれば、体裁もあるわけです。
一方、交渉がうまくいかない局面になると、配偶者からすれば、「この人は本当に交渉するつもりがあるのか?」というような懐疑的な印象を抱いてしまいます。
自分ゴトでありながら、交渉のテーブルに自分自身がつくことが出来ない為、そもそも不透明感が漂うやりとりの上に、結果が伴わないわけですから致し方ありません。
「会社ブロック」が「夫ブロック」にすり替わる
そして、駐在員としても、組織である会社へ変化を促すよりも、妻に譲歩してもらった方がラクなことは間違いないため、配偶者へ妥協する様に促してしまうということもあるでしょう。
妥協してくれない、折れてくれない妻に対して、逆に「とにかく趣味かなにかでおとなしく生活しておいて」とフラストレーションを募らせる場合もあるでしょう。
会社との交渉が、めんどくさくなってしまう時点で、本来「会社ブロック」であったはずが「夫ブロック」すり替わるわけです。
うまく会社との交渉を乗り切る3つのアドバイス
さて、この夫ブロックが深く関係する、「会社ブロック」をどのように乗り越えるかという点に関して、アドバイスするとすると、下記3点があるかと思います。
ポイント【1】自主的に情報を集め、交渉ストーリーを作る
この海外駐在員の配偶者就労のブロックについて、その背景について、そもそもめちゃくちゃ詳しいという駐在員は殆どいないと思います(笑)。
駐在員本人が交渉するにあたっても、交渉できる材料がないわけです。
まして、交渉に乗り気というケースでない限り、本人が自主的に情報を集めだすのを待っていては日が暮れてしまいます。
ですから、他社の事例、現在のトレンドなど、会社の主張をひっくり返せるようなストーリーを仕立ててあげないと、なかなか駐在員本人は動かない(というか、どう動いていいのかわからない)ということです。
まずは交渉ポイントをはっきりすること
ポイントとなってくるのは、どうして就労がダメなのか?社内規定や社内規約に明示されているのであれば、その規約・規定の変更ということがゴールになります。
もしくは、会社のエライ人がいっているからダメということであれば、その人をどう説得していくかということがポイントです。
就労自体はOKだけど、手当が変わるということであれば、その手当変更の立て付けの妥当性及び金額の交渉というわけです。
ポイント【2】交渉相手は「会社」という構図を守る
夫婦で交渉に挑む場合、本来その交渉相手は「会社」のはずです。
しかし、③パートナーのブロックで述べた通り、夫婦での方向性がギクシャクしてくると、この夫婦間で交渉の足並みがそろわないという事態になりかねません。
このような状況になると、もはや自分だけが孤立し、結果、得られる果実も得られなくなります。
どんな局面にあったとしても、交渉窓口である駐在員本人(夫)が悪いというような、態度やスタンス控え、一緒に戦うんだ!というパートナーシップが求められると感じます。
ポイント【3】「現地就労できないなら、行かない」というカードを残す
帯同前であれば、現地への渡航前に「就労することへの夫婦合意形成」及び「会社ブロックを撤回させる」ことです。
一旦、海外に来ると「就労できないなら行かない。」という交渉カードがなくなり、夫婦間でのパワーバランスが極端に弱くなります。
駐在員本人が帯同を望む状況であればあるほど、このカードは最強であります。
また、ご自身の精神安定上も、働けるか?働けないか?わからずもやもやしたまま帯同し、見知らぬ土地で上手くいかない交渉を見守るより、日本国内で決着をつけていった方が、例え交渉が上手くいかなくても納得感があることでしょう。
お気軽にご相談下さい
実は、私自身、この働く権利を得る会社との交渉は、結論を出すまでに10カ月近く要しました。
今となっては良い経験だと振り返ることが出来ますが、当時は、本当に一筋縄ではいかない交渉に、時間・メンタルを相当すり減らしたのも事実です。
もし同じ様に海外駐在員・配偶者の就労に関して、悩まれる方がいらっしゃいましたら、コーチングセッションの中で本件をテーマとして取り扱うこと可能です。お気軽にご連絡下さい。
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