アメリカに来て、最も日本人が違和感を感じる文化の一つ、それは「チップ文化」ではないでしょうか。
レストランでもチップ、コーヒーを注文してもチップ、ウーバーでもチップ、ホテルのポーターにもチップ、ホテル・レストランのバレット(係員が車の駐車を代行してくれる)にもチップ、とにかく何かとチップが好きな文化です。
日本の心遣いに溢れたサービスに慣れていると、いたって普通のサービスを受けているだけなのに、レストランで15%~25%のチップを上乗せして支払う際は、「ん~なんとも納得感がないな・・・」と感じてしまう米国ビギナーの方も多いと思います(私もでした)。
アメリカのレストラン、チップが加わるだけで、15%~25%料金が高くなるわけですから、このチップは、アメリカの物価の高さを更に感じさせる要因でもあります。
$80の食事を4人でして、$320に対して、$70近いチップを払うわけですから、「チップ高いっ!」となります。
そして、チップを渡すべき時、いらない時?チップを何%渡すのが適切か?いつどのタイミングがよいのか?など、チップに関するネタはアメリカ初心者を戸惑わせるネタの一つであること間違えなさそうです。
チップ文化のフシギ・・・日本にはサービスにお金を払う概念が薄い
日本は「自分でできるコトは、自分でやりましょうね」の文化
そもそも日本には、サービスという概念が薄い文化かと思います。つまり、誰かに何かをお願いするということにあまり慣れていない文化なのかもしれません。
例えば、ホテル・レストランでのバレットを利用する際も、日本人なら「こんな車を約10m先の駐車場に停めるなんて自分でできるし、わざわざお願いするなんて・・・自分でできるのに!」という発想になるように感じます(そして、むしろ自分の車を、知らない人に預けて、傷つけられたらどうしよう・・・という心配も(笑))。
自分の大事な資産は、自分で管理した方が安心できるという気持ちが根本にあるように思います。
また、家事・育児などの外注に関しても、日本は家庭内で完結することが良いとするきらいが未だにあったりします。自分達で頑張ればできるかもしれないということを、お金を払って解決するということに心のハードルが存在するわけです。
思い返せば、「自分でできるコトは、自分でやりましょうね」と、小さいころから幾度となく教育された記憶があります。
それは社会人となりお金に余裕がどれだけ出てきたとしても、やっぱり心のどこかで「まあ、このくらいであれば自分でやれるかな。」とお願いすることをためらったり、躊躇したり・・・。
また、表面上は、格差が少ないといわれる日本において、明らかに上・下がある関係性を望まなかったりということもあるかもしれません。
ですからホテルのポーターに対しても「ホテルの部屋までスーツケースくらい自分で運べるのに悪いなあ。それにわざわざお金渡すくらいなら、自分やった方が気がラク」という気持ちになっちゃうわけです。
日本は、サービスの対価を価格に反映できていない!?
サイゼリアのサービスは世界標準では最高レベル
これは私の所感に過ぎませんが、昨今日本の物価が上がらない状況が続く原因の一つにこのサービス産業の価格のあり方があるように感じます。
つまり標準的なサービスが、従業員を教育して、トレーニングして、しかるべきサービスレベルに「やっと」到達できる国では、よいサービスに対しての対価というものがきちんと払われるべきものであるという顧客と企業の間での共通認識があるように感じます。
つまりアメリカはじめ多くの国では、よいサービスはコストがかかるものという認識があるというわけです。ですから顧客もチップをはじめとする対価を、普通に払い、それが文化となっています。
しかし、日本のように、国民性や気質として、「自然と」気遣いができてしまい、「自然と」おもてなしをしてしまう文化においては、サービスに対しての「正当な対価」を上乗せすることが非常に難しくなっているのだと思います。
日本は、サイゼリアでも、マクドナルドでも、世界基準で言ったら相当高いレベルでのサービスが、びっくりするほどの低価格で受けられるわけです。
よいサービスを実現するためのコストというものが「当たり前のもの」として捉えられており、価格に転嫁できていないわけですよね。
これだけ第三次産業(サービス業)の割合が高くなる中、その正当な対価が価格に表れてこないとなると、「そりゃ物価上がらないよね?」って感じてしまうわけです。
※もちろんサービス価格は物価構成要素の一つにしかすぎませんが、その様な側面もあるように感じるということです。
せっかく渡すならよりいいサービスを。効果的なチップの渡し方は?
チップを渡すなら、サービスを受ける前に渡す方がよい!?
さて、せっかくチップを渡すならば、よりサービスレベルが上がった方が嬉しいですよね。
東南アジア駐在時の頃を振り返ってみると、同じチップでもアメリカとは少し使い方が違うように感じます。
アメリカのチップは基本的に、後払いです。一方、東南アジアでは前払いで渡していたことの方が多かったように感じます。
つまり、「このチップの分、ちゃんと働いてね、お願いね。」というメッセージと共に渡すという感じですね。
特に、会食や接待などのレストランで、「失敗がない会食にしたい!」というようなときに、前もってウェイター・ウェイトレスに渡していました。もちろんチップの効果はテキメン。「こんなに気を使って動けるんだ!」とこちらが感動するくらいテキパキと対応してくれます。
この経験があったため、アメリカの後払い文化では、チップのプラスαの効果が薄れている?享受できない?ような気がしてならず、チップが税金のように徴収されているような気になってしまいます(笑)。
アメリカでもケース・シーンによりますが、どうせ渡すなら先に渡してしまった方が、より心地よいサービスが受けられるように感じるのです。
また、後で渡すケースでも、常連のお店やレストランなどでは多めに払っておくと、次訪問した時に丁寧に接客してくれます。